日本の旧作名画
14世紀、日本では神話的な能が始まり、その意図的な動きと象徴的なマスクで知られる壮大な演劇の伝統文化が始まった。また、短時間でコミカルな演技ができる狂言も生まれました。16世紀には、様式化された演技と精巧な化粧で知られる歌舞伎、人形劇である文楽など、さまざまなものが生まれました。どの伝統も、その時代の文化、精神、社会、ジェンダーの原型を示すものでした。
20世紀に入っても、日本の演劇は、シェイクスピア劇から実験的で超現実的なビジョンに至るまで、さまざまな西洋の伝統を吸収してきました。
日本映画がこれらの伝統的なスタイルを直接紹介したり、脚色したりすることはほとんどありませんが、演劇の伝統的な物語が映画に脚色されたり、パフォーマンスのスタイルや視覚的な合図が銀幕に登場したりと、その影響は色濃く感じることができます。
黒澤明監督のような日本の著名な映画監督は、自身も日本の伝統的な演劇のファンであり、これらの舞台芸術への愛情を込めて、カルガリーシネマテークが自信を持ってお届けする素晴らしい映画芸術作品をいくつか制作しています。
カルガリーシネマテークの日本演劇シリーズは、能と歌舞伎という重要な形式に焦点を当て、映画用語における東洋と西洋の文化的な影響の歴史を示すことを目的としています。
上映される作品
蜘蛛巣城(1957)
DIRECTED BY AKIRA KUROSAWA
NOVEMBER 18, 2021
『蜘蛛巣城』(くものすじょう)は、1957年に公開された日本映画である。監督は黒澤明、主演は三船敏郎と山田五十鈴。モノクロ、スタンダードサイズ、110分。シェイクスピアの戯曲『マクベス』を日本の戦国時代に置き換えた作品で、原作の世界観に能の様式美を取り入れた。ラストに主人公の三船が無数の矢を浴びるシーンで知られるが、このシーンは実際に三船やその周囲めがけて本物の矢を射って撮影した[2][3]。海外ではシェイクスピアの映画化作品で最も優れた作品の1つとして評価されている。
『雪之丞変化』(ゆきのじょう へんげ) (1963)
DIRECTED BY KON ICHIKAWA
DECEMBER 9, 2021
『雪之丞変化』(ゆきのじょう へんげ)は、1934年(昭和10年)から翌年にかけて朝日新聞に連載された三上於菟吉の時代小説。これを原作とした多くの映画・テレビドラマ・舞台・新作歌舞伎・宝塚歌劇などが製作されている。
『楢山節考』(ならやまぶしこう) (1958)
DIRECTED BY KEISUKE KINOSHITA
DECEMBER 22, 2021
『楢山節考』(ならやまぶしこう)は、深沢七郎の短編小説。民間伝承の棄老伝説を題材とした作品で、当代の有力作家や辛口批評家たちに衝撃を与え、絶賛された、当時42歳の深沢の処女作である[1]。山深い貧しい部落の因習に従い、年老いた母を背板に乗せて真冬の楢山へ捨てにゆく物語。自ら進んで「楢山まいり」の日を早める母と、優しい孝行息子との間の無言の情愛が、厳しく悲惨な行為と相まって描かれ、独特な強さのある世界を醸し出している。
1956年(昭和31年)、雑誌『中央公論』11月号に掲載され、第1回中央公論新人賞を受賞した[1]。単行本は翌年1957年(昭和32年)2月1日に中央公論社より刊行された。ベストセラーとなり、これまでに2度、映画化された。文庫版は新潮文庫で刊行されている。翻訳版は1958年(昭和33年)のベルナール・フランク訳(仏題:“La Ballade de Narayama”)をはじめ、各国で行われている。(1959年のガリマール版(ベルナール・フランク訳)の表題はETUDE A PROPOS DES CHANSONS DE NARAYAMA)。
『楢山節考』(ならやまぶしこう) (1983)
DIRECTED BY SHOHEI IMAMURA
DECEMBER 23, 2021
- 『楢山節考』(今村プロダクション、東映) カラー131分。
- 1983年(昭和58年)4月29日封切。
- 監督・脚本:今村昌平。
- 出演:緒形拳、坂本スミ子、あき竹城、左とん平、小林稔侍、倍賞美津子、樋浦勉、江藤漢、ほか
- カンヌ国際映画祭にてパルムドールを受賞(仏題:La Ballade de Narayama)。
『地獄門』(1953)
DIRECTED BY TEINOSUKE KINUGASA
JANUARY 6, 2022
『地獄門』(じごくもん、英題:Gate of Hell)は、1953年(昭和28年)10月31日公開の日本映画である。大映製作・配給。監督は衣笠貞之助、主演は長谷川一夫。イーストマンカラー、スタンダード、89分。
日本初のイーストマン・カラー作品で[3]、大映にとっても初の総天然色映画となる。『平家物語』や『源平盛衰記』などで語り継がれた、袈裟と盛遠の物語を題材にした菊池寛の戯曲『袈裟の良人』が原作[4]。色彩指導に洋画家の和田三造を起用して平安時代の色彩(和色)の再現に努めた。本作は第7回カンヌ国際映画祭で最高賞であるグランプリ[注 1]、第27回アカデミー賞で名誉賞と衣裳デザイン賞を受賞した[5]。
『狂つた一頁』(くるったいっページ(1926)
DIRECTED BY TEINOSUKE KINUGASA
JANUARY 6, 2022
『狂つた一頁』(くるったいっページ)は、1926年(大正15年)に公開された日本映画である。監督は衣笠貞之助、主演は井上正夫。衣笠が横光利一や川端康成などの新感覚派の作家と結成した新感覚派映画聯盟の第1回作品で[1]、無字幕のサイレント映画として公開された。
激しいフラッシュバックや多重露光、キアロスクーロ、素早いショット繋ぎ、オーバーラップなどの技法を駆使して斬新な映像表現を試みた、日本初のアヴァンギャルド映画である[2][3]。物語は精神病院が舞台で、狂人たちの幻想と現実が交錯して描かれる。大正モダニズムの成果である本作は、ドイツ映画『カリガリ博士』(1920年)に触発されたものであるが、そこに日本人固有の家族観が入れられているところに独自の工夫がある[3][4]。
『近松物語』(ちかまつものがたり) (1954)
DIRECTED BY KENJI MIZOGUCHI
JANUARY 20, 2022
『近松物語』(ちかまつものがたり)は、1954年(昭和29年)の日本映画。溝口健二監督作品。近松門左衛門作の人形浄瑠璃の演目『大経師昔暦』(だいきょうじ むかしごよみ、通称「おさん茂兵衛」)を下敷きにして川口松太郎が書いた戯曲『おさん茂兵衛』を映画化した作品である。脚本は、近松の『大経師昔暦』と、同一事件(おさん茂兵衛参照)を題材にした西鶴の『好色五人女』の「おさん茂右衛門」の二つを合体させたものである[1]。スター嫌いだった溝口健二監督は、大映社長の永田雅一の強い要請で長谷川一夫を起用した。
キネマ旬報ベストテン第5位にランクインされた。1999年にキネマ旬報社が発表した「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編」では第49位にランクインされた(同じ順位に『隠し砦の三悪人』『もののけ姫』など)。
『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』 (1981)
DIRECTED BY PAUL SCHRADER
FEBRUARY 3, 2022
『ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』(原題: Mishima: A Life In Four Chapters)は、日本とアメリカ合衆国の合作映画。三島由紀夫の生涯とその文学作品を題材にした伝記風の芸術映画。「美(beauty)」「芸術(art)」「行動(action)」「文武両道(harmony of pen and sword)」の4つのチャプター(4幕)から成る[1][2]。
1985年(昭和60年)にアメリカ、欧州などで公開されたが、日本では未公開である[3][2]。制作は日本のフィルムリンク・インターナショナル、アメリカのアメリカン・ゾエトロープとルーカスフィルム。日本人俳優が「日本語」で演じている初の本格的な日米合作映画として画期的なものとされている[2]。
本国アメリカでは興行的に惨敗したものの1985年度の第38回カンヌ国際映画祭最優秀芸術貢献賞を受賞し、各方面で大きな反響を呼んだ[2][4]。当初日本でも『MISHIMA ――11月25日・快晴』の邦題で公開予定だったが、三島役の同性愛的描写などに対して瑤子夫人が反対し[5]、右翼団体の一部が抗議しているという噂が流れたため、映画配給会社が躊躇して日本では劇場公開されなかった[2]。日本ではビデオ・DVD化もされていないため「幻の作品」となっている[注釈 1]。